厚木運転代行マーベラス

ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」を制したことで広く世に知られた神奈川県厚木市の名物で、豚ホルモンの「シロコロ」という名称が商標権をめぐるトラブルによって使えなくなって1年余り。市内経済の一端を担う提供店はコロナとのダブルパンチにあえぎ、飲食店街は活気を失っている。しかし、騒動の後遺症が市内に影を落とす中にも、新しいネーミングを定着させようとする前向きな動きがようやく出てきた。 「名前が使えなくなったといっても、市内にもともとあった名物。味が変わるわけでもなく、引き続きPRに努めていくしかない」 厚木市の小林市長(72)が記者会見でこう話し、苦々しい表情を浮かべたのが昨年3月。翌4月以降は、市の名物に「シロコロ」の名称を使うことができなくなった。 店主らは恨み節 背景にあったのは、名称の商標権をめぐるトラブルだ。それまで10年以上にわたり、官民一体でPRしてきたが、活動の中心となっていた民間の個人2氏が、市に対して商標権の買い取りを要求。交渉が決裂すると、名称の使用差し止めを提供店や市に求めたのだ。 以降、提供店は「シロコロ」の名称をメニューや看板から消去するなどの対応を余儀なくされた。市も刊行物や「ふるさと納税」の返礼品から名称を削除するなど対応に追われた。 そうした「シロコロ騒動」から1年余り。以前の提供店はそれぞれ、「シロ」や「シロホルモン」など、まちまちな名称を用いて営業を続けている。ただ、経営者らの表情は芳しくない。 看板商品の〝名前〟を奪われる形となったため、「全国に浸透した名前なのにホームページなどで使えなくなった。検索で探し当ててくれる客が減ったようだ」(提供店店主)などの恨み節が聞こえてくる。 この1年は、コロナ禍も経営に追い打ちをかけた。市内にある提供店の一つ「おひさま」は、土日の昼間のみの営業に変更するなど、追い詰められている。店主の鮫島さち子さん(71)は「店を開けていても客が全然来なくて、1、2組だけの日もある。今は協力金でしのいでいるが、いずれ店じまいも考えなければならないかもしれない」と嘆く。 騒動でイメージ悪化 提供店を筆頭に、通常なら営業しているはずの時間帯に閉まっている店舗が目立ち、厚木の飲食店街は閑散としている。提供店の一つ「千代乃」の店主、島津英俊さん(70)は「コロナが収束するまで耐えるしかない」と話し、諦め顔だ。 平成18年に始まり、ご当地グルメブームを巻き起こしたB-1グランプリ。全国各地の参加団体がこぞって商品の発掘や開発に勤しむなか、厚木市の「シロコロ」は「富士宮やきそば」(静岡県富士宮市)や(千葉県勝浦市)などと並び、全国に名をとどろかせた成功事例の一つだった。 「名物」を新たに創作する参加団体も少なくなかったが、厚木のホルモン焼きは、もともと地元で伝統的に食されてきた名物だった。そこに「シロコロ」の名称が〝後付け〟され、20年大会の優勝で一躍有名になったという経緯がある。 食を通じたまちおこしに一度は大きな成功を収めたものの、一転してイメージの悪化を招くという結末に、多くの市民や行政関係者が複雑な心境をのぞかせる。ある関係者は「商標権のトラブルでイメージが悪化した。元のもくあみどころか、宣伝しにくくなった分、元より悪い」と話し、「個人のビジネスに店舗や行政など多くの関係者が振り回された」と憤る。 ホルモン全体をPR 一方、「シロコロ」の名称になお愛着を示す関係者も。「名前は今でも通じるし、会話のなかで使う分には問題ないでしょう」と話すのは、「シロコロ」のPRに当初から関わったという市議の一人。「みんなが一丸となっていた時代が懐かしい」と目を細める。 新たな動きも見られている。市は新しいパンフレットなどで「厚木ホルモン」という名称に切り替えてPRを始めた。観光振興課の担当者は「厚木は豚のまち。(大腸の)シロだけでなく、レバーやハツなど、ホルモン全体を売り出していく。新しいネーミングで、名物としての存在感を高めたい」と意気込む。 多くの関係者を巻き込みながら、痛手を負うこととなった「シロコロ騒動」。今後、まちおこしを進める中で行政は、市民とのかかわり合い方が改めて問われることになりそうだ。

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